平成25年度版の情報通信白書(総務省)によると、平成24年末に日本企業を対象にした調査企業のうち、28.3%がクラウドサービスを利用していて、前年末と比べると利用企業数は6.7ポイント増加している。日本でも導入する企業が増加してきているクラウドサービスについて、あらためて概念を整理してみたい。
クラウドサービスは新しい分野・技術であるため、概念や、その境界線は常に変化しており、かつ、定着していないが、大きな分類としては、プライベートクラウドとパブリッククラウドに分けることができる。
プライベートクラウドとは、企業が自社のデータセンターや事業所内に、その企業独自のクラウドを構築し、自社、及び自社のグループ企業や、その従業員に提供する形態である。従来は、利用用途単位に物理的なサーバを個々に構築・運用してきていたが、VMWARE等のサーバ仮想化技術が登場してきたことにより、複数の物理的なサーバを集約化することが可能になった。つまり、論理的には複数の仮想的なサーバを、1台の物理的なサーバに集約して利用する形態である。サーバを仮想化することにより、運用が効率的になり、費用対効果が高まるという効果がある。プライベートクラウドは、企業固有のクラウドサービスを構築することから、この後に説明するパブリッククラウドと比べて導入・運用費用が高価になることもあり、中堅・中小企業に比べると大企業で利用されていることが多い。
一方、パブリッククラウドは、「複数の企業」が、共用のサーバを利用する形態である。仮想化技術による1台の物理的なサーバに、論理的には複数のサーバ機能を構築・運用している点はプライベートクラウドと同じであるが、プライベートクラウドが単独企業で利用していたところを、パブリッククラウドは複数企業で利用している点が異なる。パブリッククラウドは、プライベートクラウドと比べて安価に利用することができ、また、サーバの運用管理をアウトソーシングできるため、情報システム管理に多くの人材を割くことができない中小企業で利用が進んでいる。
また、パブリッククラウドを分類する定義としては、SaaS、PaaS、IaaSがある。SaaSは、Service as a Serviceの略称であり、アプリケーションを提供するクラウドサービスである。代表的な例としては、Google Appsや、Office365、Sal
esforceが、この領域に該当する。PaaSは、Platform as a Serviceの略称であり、ソフトウェアを稼働するプラットフォームを提供する。代表的な例としては、Salesforce .comが提供するforce.comやMicrosoft Azureがある。IaaSは、Inflastructure as a Serviceの略称であり、サーバ等のインフラを提供する。代用的な例としては、Amazon Web ServiceのS3や、PaaSと同じくMicrosoft Azureがある。Amazon Web Serviceは、米国では政府専用のクラウドサービスを提供していることもあり、多くの米国政府機関でも利用されている。
クラウドサービスの概念や分類について書いてきたが、冒頭で述べた通り、常に変化し続けている分野であるため、最新技術や、用語の定義、範囲は常に最新情報をチェックしておくのが望ましい。
※1.アイキャッチ画像は、フリー百科事典「ウィキペディア」より、「Cloud computing.svg」を引用
※2.表中の画像は、日経BP社ITPro「SaaS/PaaS/IaaSとは」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20110216/357282/)より引用